Google Tensor G5

Google Tensor G5

Tensor G5:3nmプロセスと“スマート”なタスクへの注力

Tensor G5は、Google独自設計による第5世代のモバイル・プラットフォームで、初めてTSMCの3nmラインで製造された。微細化により電力効率と長時間負荷時の安定性が向上し、AIや写真/動画処理での発熱も低減。公式発表と独立テストによれば、CPU性能は約3割向上し、テンソルアクセラレータ(TPU/NPU)はそれ以上に強化され、Gemini Nanoを基盤とするオンデバイス機能を強力に支える。

アーキテクチャ:1+5+2のCPUコア、新しいISP、そして“異色”のGPU

CPUは1+5+2構成を採用する。ピーク性能用の「ビッグ」1コア、持続性能重視の「ミッド」5コア、省電力の2コアという組み合わせで、より広い「ミッド」群に比重を置くことで、長いタスクでもマルチスレッド性能を安定させ、スロットリングを抑える狙いだ。

カスタム要素の要は刷新された画像信号処理プロセッサ(ISP)。高速なノイズリダクション、モーションデブラー、肌色再現の改善(Real Tone)、主要撮影モードでのネイティブ10ビット動画などを実現する。ISPとTPUの連携が、写真/動画の品質向上とカメラの「マジック」機能の速度向上を牽引する。

議論を呼ぶのがGPUだ。GoogleはArmのMali/Immortalis系から、Imagination PowerVR DXT(DXT-48-1536)に切り替えたと報じられている。Androidフラッグシップとしては珍しい選択で、一部ゲーム/エミュレータのサポートに癖があり、ハードウェア・レイトレーシングも非対応。日常アプリには支障ないが、純粋なゲーム性能はG5の得意分野ではない。

メモリとストレージサブシステム

Tensor G5はLPDDR5Xおよび最新のディスプレイ/メモリコントローラを前提とする。AIベンチやゲームのフレーム安定性は、Pixel 10各モデルのRAM容量と冷却設計に左右されやすい。16GB RAMとベイパーチャンバー搭載モデルは、周波数維持が良好でスコアも高く出やすい。

モデムと接続性:依然として“混在”のエコシステム

SoCはTSMC製造へ移行した一方で、プラットフォームとしては外付けのSamsung Exynos 5400モデムを継続採用。5Gのsub-6とmmWave、FR1+FR2のキャリアアグリゲーション、下り最大14.79Gbps(Samsung仕様)に対応し、緊急衛星通信のためのNTNにも備える。最新のQualcomm/MediaTekの一部先端機能は欠くが、実ネットワークで致命的になる場面は多くない。

パフォーマンス:ベンチマーク vs 実使用

ベンチマークではおなじみの構図。Tensor G5はTensor G4より明確に高速だが、QualcommやAppleの最上位には及ばない。Geekbench 6ではCPUが機種差を含め約20〜35%向上。3DMark Wild Life ExtremeはProモデルで約19 FPSと、Snapdragon 8 Elite勢より低めだ。一方、AIタスクではTPUが約60%伸び、生成系機能、トランスクリプション、コンピュータビジョンの速度向上として体感できる。

体感面では、G5搭載のPixel 10は発熱が少なく安定動作し、スリープ復帰が速く、マルチタスク時の急な失速が減り、「Magic Cue」や「Camera Coach」など“スマート”機能の処理が明らかに速いとの評価。ゲーム最優先でなければ、快適さを重視したチューニングに感じられる。

AI機能:Gemini Nanoとプライバシー重視

更新版Gemini Nanoとの組み合わせで、Tensor G5はより多くの処理をデバイス上で実行する。文脈提案、要約、音声機能、強化されたライブ翻訳、メディア処理などが代表例だ。ローカル実行はレイテンシを下げ、機微情報をクラウドに送る必要もない。結果として、日常的に使いたくなる機能のレスポンスが一段と向上する。

写真と動画:チップ上の“デジタルラボ”

Googleの狙いは巨大化するセンサーではなく、ISP+TPUの相乗効果にある。Tensor G5では、夜景、HDR合成、手ぶれ補正が進化し、連写や動画モードが高速化。肌色のトーンはより自然だ。従来世代で課題だったスロットリングや発熱も抑えられ、長時間録画やエフェクト処理の一貫性が高まった。

Tensor G5が向いているユーザー

  • 写真/動画とAI機能を重視する人。 新ISPとNPUの恩恵を最大限に受けられる。

  • 安定性とバッテリー持ちを重視する人。 TSMCの3nm移行で、熱とスタミナが目に見えて改善。

  • ハードコアなゲーマーには非推奨。 最高設定のゲームでは競合が優勢—Googleの意図的なトレードオフだ。

まとめ

Tensor G5は、これまでで最も“Googleらしい”Tensorだ。ベンチマークの頂点を追うのではなく、スマートなシナリオ、カメラ品質、日常の快適なスピードに注力。3nmプロセスと刷新されたカスタムブロック(ISP、ディスプレイコントローラ、TPU)が、実使用でPixelが評価される要素—安定性、写真/動画品質、役立つオンデバイスAI—をしっかり底上げした。ゲームと“生の数値”を最優先するならQualcomm/Appleに分があるが、日常体験を重視するなら、G5はまさに待ち望まれたTensorのアップグレードと言える。

基本

レーベル名
Google
プラットホーム
SmartPhone Flagship
発売日
August 2025
製造業
TSMC
モデル名
Tensor G5
建築
1x 3.4 GHz – Cortex-X45x 2.85 GHz – Cortex-A7252x 2.4 GHz – Cortex-A525
コア
8
プロセス
3 nm
頻度
3400 MHz

GPUの仕様

GPU周波数
1100 MHz
FLOPS
1.536 TFLOPS
最大表示解像度
3840 x 2400

接続性

5Gサポート
Yes
Bluetooth
5.4
Wi-Fi
7
Navigation
GPS, GLONASS, Beidou, Galileo, QZSS

メモリ仕様

メモリの種類
LPDDR5X
Bus
4x 16 Bit

その他

ニューラルプロセッサ (NPU)
Yes
オーディオコーデック
- AAC - AIFF - CAF - MP3 - MP4 - WAV
カメラの最大解像度
1x 200MP
ストレージタイプ
UFS 3.1, UFS 4.0
ビデオキャプチャ
8K at 30FPS, 4K at 120FPS
ビデオコーデック
- H.264 - H.265 - AV1 - VP9
ビデオ再生
8K at 30FPS, 4K at 120FPS
指図書
ARMv9.2-A

ベンチマーク

Geekbench 6
シングルコア スコア
2222
Geekbench 6
マルチコア スコア
5598
FP32 (浮動小数点)
スコア
1567
AnTuTu 10
スコア
1417023

他のSoCとの比較

Geekbench 6 シングルコア
4007 +80.3%
2222
995 -55.2%
733 -67%
372 -83.3%
Geekbench 6 マルチコア
14383 +156.9%
5598
2743 -51%
1860 -66.8%
1156 -79.3%
FP32 (浮動小数点)
6110 +289.9%
2376 +51.6%
1567
700 -55.3%
433 -72.4%
AnTuTu 10
4177588 +194.8%
1518170 +7.1%
1417023
603872 -57.4%
457459 -67.7%