MediaTek Dimensity 7400X
MediaTek Dimensity 7400X
MediaTek Dimensity 7400X は、4nm プロセスで製造された最新の 5G ミドルレンジ SoC で、薄型スマートフォンやコンパクトなフリップフォン向けに設計されています。性能・バッテリー持ち・カメラ機能のバランスを重視する機種に適したチップです。スペック面では Dimensity 7400 に近いものの、フォルダブル向けのデュアルディスプレイ対応、より積極的な省電力アルゴリズム、そしてゲームへの最適化が強化されています。
アーキテクチャと製造プロセス
Dimensity 7400X は、TSMC の 4nm (N4) プロセスで製造されており、現在のミドル〜ミドルハイ向けチップの標準的なプロセスとなっています。
CPU 構成:
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高性能 Arm Cortex-A78 コア ×4(最大 2.6GHz)
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省電力 Arm Cortex-A55 コア ×4(最大 2.0GHz)
この構成は典型的なスマートフォンの使い方を想定しており、重い処理は高速コアが担当し、軽いアプリやバックグラウンド処理は省電力コアで動作します。
CPU: 日常使用でのパフォーマンス
4+4 の 8 コア構成により、日常的な操作で十分に快適な体験を得られます。
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アプリ起動が素早い
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最大 120Hz の高リフレッシュレート表示でも UI が滑らか
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メッセンジャー、ブラウザ、カメラを同時に使うマルチタスクも安定
4nm プロセスのおかげで発熱が抑えられており、冷却構造に制約のある薄型端末やフォルダブル端末にとって特に有利です。
GPU とゲーム性能
グラフィックス処理は Arm Mali-G615 MC2 が担当します。比較的高いクロックで動作し、ミドルクラスとしては十分な性能を発揮します。
対応ディスプレイは以下の通りです。
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最大 120Hz の WFHD+ パネル
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最大 144Hz の Full HD+ パネル
ゲーム面では、MediaTek HyperEngine Gaming Technology スイートが活用されています。
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MediaTek Adaptive Gaming Technology 3.0 (MAGT 3.0): 温度やバッテリー残量に応じて負荷とフレームレートを動的に調整
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Network Observation System (NOS): ネットワーク品質を監視し、ラグや FPS ドロップを軽減
実際の使用感としては次のようなメリットが期待できます。
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人気オンラインゲームで、中〜高設定でも安定した平均 FPS
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旧世代の 6nm チップと比べて明らかに低い発熱
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薄型のフリップフォンでも無理のないゲームプレイ
ただし、GPU 性能はフラッグシップレベルには届かないため、最も heavy なタイトルでは画質設定の調整が必要になります。
AI 機能
Dimensity 7400X には、第 6 世代の MediaTek NPU 655 が搭載されています。主な役割は以下の通りです。
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カメラの AI ベースの機能(ポートレート、夜景、HDR など)の高速化
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画像・動画のリアルタイム処理
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ディープラーニングを用いたフィルターやエフェクトの適用
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一部のシステム機能やアプリにおけるオフライン AI 推論の高速化
新しい NPU は前世代より電力効率が向上しており、AI 処理をより短時間かつ低消費電力で実行できます。これは、長時間の撮影や大量の写真編集、バックグラウンドでの AI 機能利用時に、バッテリーと発熱の面で有利です。
カメラ
画像処理は MediaTek Imagiq 950 ISP が担当します。
サポート内容は以下の通りです。
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最大 2 億画素までのカメラセンサーに対応
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高度なノイズリダクションアルゴリズム
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写真向け 12 ビット HDR 処理
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最大 4K 30fps の HDR 動画撮影
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拡張ダイナミックレンジと最新の HDR モードに対応
これにより、Dimensity 7400X 搭載スマートフォンは、同価格帯として十分高い写真・動画品質を実現できます。一方で、一部の競合と異なり 4K 60fps に対応していない点は弱点と言えます。
メモリとストレージ
Dimensity 7400X は以下のメモリ・ストレージ構成をサポートします。
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LPDDR5 / LPDDR4X RAM(最大 6400Mbit/s)
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UFS 2.2 / UFS 3.1 ストレージ
メーカーは価格帯や製品ポジションに応じて組み合わせを選択できます。
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エントリー寄りのモデル: LPDDR4X + UFS 2.2
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上位ミドルレンジモデル: LPDDR5 + UFS 3.1 を採用し、システム応答性やアプリ・ゲームの起動速度を大幅に向上可能
ディスプレイ
ディスプレイ面で、Dimensity 7400X はミドル〜ミドルハイ機種向けの高品質パネルを想定しています。
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WFHD+ 解像度で最大 120Hz
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FHD+ 解像度で最大 144Hz
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MediaTek 独自の映像処理技術による最新 HDR モードや画質向上機能をサポート
フリップ型端末にとって特に重要なのは、デュアルディスプレイをネイティブにサポートしている点です。1 つの SoC で内側のメインディスプレイと外側のサブディスプレイを同時に駆動し、状況に応じてリフレッシュレートや消費電力を最適化できます。
接続性とバッテリー効率
Dimensity 7400X には、以下に対応した 5G モデムが搭載されています。
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SA / NSA モードの 5G NR Sub-6
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高速ダウンロードのための 3CC キャリアアグリゲーション
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信号品質向上とレイテンシ低減のための最新無線技術
さらに、無線機能として次のものをサポートします。
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2x2 構成の Wi-Fi 6E
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Bluetooth 5.4
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GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo, QZSS など、複数の衛星測位システム
モデムと RF ブロックに搭載された省電力アルゴリズムにより、5G の電波状況やネットワーク種別が頻繁に変化する実環境でも、バッテリー消費を抑えることができます。
Dimensity 7400X 搭載端末
2025 年末時点で、Dimensity 7400X は例えば次のような端末に採用されています。
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Motorola Razr 60
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Motorola Razr 2025
いずれも約 6.9 インチのメインディスプレイと外側のサブディスプレイを備えたフリップフォンであり、Dimensity 7400X の強みであるデュアルディスプレイ対応、高い電力効率、コンパクトな筐体でも滑らかな UI と安定したゲーム性能を発揮できる点が活かされています。
まとめ
MediaTek Dimensity 7400X は、4nm プロセスで製造された 5G ミドルレンジ SoC で、以下の点にフォーカスしています。
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4 コア Cortex-A78 + 4 コア Cortex-A55 構成による、日常利用での安定した性能
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Mali-G615 MC2 と HyperEngine 技術による、発熱を抑えつつ十分なゲーム性能
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Imagiq 950 と最大 2 億画素センサー対応による優れたカメラ性能
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5G, Wi-Fi 6E, Bluetooth 5.4、各種 GNSS による現代的な接続性
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デュアルディスプレイ対応で、特に手頃な価格帯のフリップフォンに最適
一方で、次のような弱点もあります。
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依然として Cortex-A78 / A55 世代のアーキテクチャであり、最新の Cortex-A7xx 世代ではない
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動画撮影が 4K 30fps までに制限されている
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GPU 性能がフラッグシップ級には届かないため、最重量級のゲームでは画質設定の妥協が必要
総合的に見ると、Dimensity 7400X はマス市場向け 5G スマートフォンやフォルダブル機種にとって非常に実用的な選択肢です。フラッグシップではないものの、主要な利用シナリオをしっかりカバーし、価格帯を考えればゲームとカメラの両面で十分な余裕を提供する、効率的で汎用性の高いチップセットと言えるでしょう。
基本
GPUの仕様
接続性
メモリ仕様
その他
ベンチマーク
Dimensity 7400X 搭載スマートフォン
Dimensity 7400X 搭載デバイスの比較
他のSoCとの比較
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